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希望はここにある

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 希望とは暗闇の中の小さな灯である。太陽が照っている昼間にはその灯は見えない。だが暗闇を歩く時、その明りは私たちと共にある。ヘルメットのライトが地下で作業する人々を助け、灯台が船を安全に導くように。それらは誰かが作ったものだ。太陽の熱のように無償で与えられたものではない。希望は人間が勇気を奮い起こして灯すもの、消えないように心を配る大切な明りでもある。

 キリストが十字架にかけられ、葬られた後、弟子たちはどれほどつらい思いをしただろうか。文字通り世界が暗黒になったと感じたに違いない。

 2人の弟子がエマオに行く道中、復活したキリストと出会う。見知らぬ旅人が一緒に歩きながら語ってくれる言葉に2人は感心するが、旅人が甦ったイエス自身であることはわからない。宿に到着して、祈りを捧げパンを裂いた時、突然目が開いたように二人はイエスに気づく。だがそれを悟った瞬間、イエスは肉眼では見えなくなるのである。(ルカ24・13~31)

 主の復活を知った時、2人の心は晴れ、世界は光であふれただろう。それは喜びと希望が生み出した明るさだったろう。その中にイエスの姿は消えてしまう。光の中では光が見えないように。

 その後、多くの弟子たちが光を灯し続け、主の言葉を広めていったのは、よく知られる通りである。彼らの乗り越えた困難を思うと復活を信じ、希望を持ち続けることで生まれる力には感嘆するほかはない。

 2000年の時間を経て今、私たちもエマオに向かう途中だ。2人の弟子と同じに悩みで心は一杯であるし、未熟な短所も持ちあわせている。だがそんな自分たちでも灯せるものがあるらしい。光の中から、それを教えられるような気がする。