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息吹

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 息吹きとは、文字通り息を吹き吸うという息遣いのことです。比喩に使われることが多い言葉ですが、季節との組み合わせは、なぜか「春の息吹き」が慣用句で、夏、秋、冬との組み合わせで使うことはあまりありません。

 なぜでしょうかと考えてみました。春は生命あるすべてのもの、動物も植物も眠りから目覚め活動を始める季節と言えます。冬の間じーっとしていた動物たちが運動し始め、土の下で待っていた植物たちは土の中から新芽を出し、すくすくと成長し始めます。

 息吹きが息を吹き込む行為とするなら、瀕死の人に息を吹きかけて命を救ったり、傷に息を吹きかけて治したなど、息そのものの働きについてのエピソードは、旧約聖書にも新約聖書にも記述があります。

 正しい息遣いは健康の証でもあります。

 子供の頃、日曜学校で神様が天地を創造されたことを教えられ、私は天候に神様のメッセージが反映されると信じていました。晴れて欲しい日の前夜、就寝前のお祈りで神様にお願いすると大抵叶えられ、感謝の祈りを捧げたものでした。

 風が吹くと神様の息吹きと感じて戯れました。四季折々の風の違いは季節の花とよく似合って、春一番が梅の香りを運び、やわらかな風は音もなく満開の桜を散らし、新緑を揺らす5月の爽風、強い陽射しの下、向日葵の花を揺らす一陣の風、コスモスの群生をなぎ倒すように吹く二百十日の強風、そして紅葉を散らす木枯らしと、全ての風に季節の風情を感じてきました。

 地球温暖化で天災が多発するようになった昨今、欲望のままに自然破壊を容認してきた現代人のおごりを反省し、神様の息吹きに耳を傾ける習慣を取り戻さなければと思うのです。