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息吹

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

 人口減少に伴い、働く人が不足している職場が増えているとのニュースがよく聞かれます。その中で保育士の働き場も深刻のようです。保育士に魅力的な職場づくりを模索する動きが始まったとのこと。

 或る企業主導型保育施設では、運動会やクリスマス会などの企画は、園の運営会社の担当者が担い、現場の負担を軽減しています。「大切なのは子どもと向き合うこと」であるというわけです。

 以前だと、長時間勤務は当たり前。装飾づくりや書類作成の仕事は家に持ち帰り。毎日、疲れ果ててぐったり。休日も行事の衣装づくりなど、自分の時間を持つことがなかなかできなかったといいます。「子どもと向き合う」なんて二の次だったような感じがするのです。

 学習塾においても、「教える」から「支える」という指導方法に転換がなされているというのです。「自立学習」と呼ばれる方法です。その背景にあるのが、やはり、働く手が少ないということです。

 こうした動きは、ほんの始まりに過ぎないのかもしれませんが、その動きの根底に、「人」を大事にする、「子ども」を信じていこうとする思いが育っているのではないかという、子育てにあたる親、大人の真意を感じたいのです。

 フランシスコ教皇はおっしゃいます。「貧しい人と実際会ってください。それはわたしたちが貧しいことを思い起こし、神の救いは内面の貧しさがあるところでしか働かないことを思うためです」と。

 つまり、新たな体験に進もうとするとき、その実りの息吹は「人」の中に芽生えている、しかも目立たない、自分でも気づいていないかもしれない純粋な気持ちに、込められているといえるのではないでしょうか。