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息吹

遠藤 政樹

今日の心の糧イメージ

 今年も日本の四季に欠かせない、桜の美しい時が訪れました。

 しかし、単純に春の息づかいと喜べなくなりました。人間と自然の調和を祝う合唱曲「山の息吹」や、ミサでの典礼聖歌「神の息吹」、「主の息づかい」を歌っている時、喜びと共に、心配する事態が増えてきたことも心に浮かぶようになっています。

 神から命を与えられて生きる息づかいは、心の息づかいでもあります。

 近年私達は大自然の脅威、人間同士の争いに脅かされ、人間の仕業の脅威にも気づき始めました。

 2019年、二酸化炭素効果ガスの濃度が過去最高になり、温暖化が観測史上最高値を更新しました。

 そんな中、フランシスコ教皇様が来日されました。その時のメッセージは、日本中の人に心の息づかいを与えてくださいました。

 その時、日本の弾圧された潜伏キリシタンが400年近く守り伝えてきた聖画「雪のサンタマリア」が京都で修復され、その複製が教皇様に贈呈されました。私はその「雪のサンタマリア」に、チェロ独奏の曲を作曲しました。祈りながらマリア様の息づかいを感じ、音楽として表現したかったのです。

 この社会の中でも、力を合わせて成長する若者の逞しい息づかいが聞こえます。子どもが大人になった時、安心した過ごせる社会を考えている大人の息づかいも聞こえます。

 高齢者の方の中には、「今はただ息をして生きているだけ」と嘆かれる人がいます。私も高齢者ですが、互いにささやかでも、再会を喜び、静かに寄り添うだけで話が弾み、歩んできた人生を懐かしむ時間を持つことが出来ます。

 そこにいつも心の息づかいが聞こえています。