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息吹

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 「弥生」とは3月の別名です。「弥」は、「いよいよ、ますます」、たくさんの草花や木々が、一斉に「生い茂る」からだそうです。その名の通り、春が近づき、春を待ちわびていたように、命の息吹が芽生え、充満する季節になりました。

 キリスト教では、この春の季節に復活祭を祝います。2020年は4月12日です。ヨハネ福音書20章に、十字架上の死から復活された主キリストが家に鍵をかけて閉じこもっていた弟子たちに現われる場面が描かれています。彼らは、愛するイエスの死に落胆し、失意のうちにその死を悼むと共に、弟子である自分たちにも危害がおよぶのではないかと怯えていたのです。しかし、そんな彼らの前に復活された主イエスが現われ、「平和があるように」とご自身の息を吹きかけられたのでした。弟子たちは、この復活の息吹によって、全く新たにされたのです。

 自分という殻に閉じこもっていた弟子たちは、神の愛の息吹を受けて、新しい命に生きる者に変えられました。恐れや不安、臆病からも解放され、大胆に自分たちの体験を分かち合い、この弟子たちから世界中に福音を宣べ伝える共同体・教会が誕生し、成長していったのです。

 春は、そのような主キリストの復活と新しい命を端的に象徴しています。日本では、春に芽吹いてくる命を愛でる、自然を鑑賞する美しい習慣、情緒が大切にされています。私は、神様が創られた大自然を愛でる心を通して、キリストの「キ」の字を知らずとも、主キリストの平和に与ることにつながることができるように感じます。何故なら、絶えずこの被造界のすべては神様の深い愛の息吹に生かされ、包まれ、新たにされているからです。