多くのカトリック教会は、昼間、門を開放しています。いつでも誰でも、祈るために聖堂に入ることができるためです。
私も教会の近くを通るときには、少しの時間でも立ち寄るようにしています。すると、誰かが祈っていることがありますし、私がいるときに人がやってくることもあります。
先日、東京のカトリック麹町教会で祈っていた時のことです。やや太りぎみで白髪の男性が背後からやってきて、私のいた場所の斜め前の席で静かに黙想を始めました。
どこかで見たことがある人だな、誰だったかなと思いつつ、15分ほど過ぎた頃でしょうか。一人の女性が後ろからきて、その男性にささやきかけました。「先生、時間です」というように聞こえました。
男性は振り返って立ち上がると、教会の一番後ろに立っておじぎをした若い男性の方に歩いていきました。その時、はっきり顔が見えたのですが、白髪の男性は、「ひふみん」、棋士の加藤一二三さんでした。加藤さんの所属教会はカトリック麹町教会で、結婚講座を受け持っていると聞いたことがあります。たぶん講座までの時間を祈って待っておられたのでしょう。
教会に行くと、こんなふうに有名人と出会えることは、まずありません。ただ、世界で最も有名で、最も素晴らしい方がいつも私たちを待っていてくださいます。
教会の祭壇の奥には聖櫃があり、その中にはイエス・キリストのご聖体が安置されているのです。そこでイエス・キリストは私たちがやってくるのをずっと待っていてくださいます。そうして、放蕩息子の父親が両手を広げ抱きしめて、わが子を迎え入れたように、私たちを優しく歓迎してくださるのです。