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なつかしい

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 もうずいぶん前ですが、思いがけない時に、本当になつかしい思いをしたことがあります。初めて外国旅行をして、最後に聖地に行きました。その頃、パレスティナと言えば、エルサレムとか、あの辺りの聖書の土地という意味でした。まだ、今のようにひどい戦争になってはいませんでした。それでも、イスラエルと周辺の国とは緊張した状態でした。

 私はローマからの帰りに、もう二度とそのような機会はないだろうからと思い、エルサレムに寄ったのです。ローマから飛行機を乗り継いで、ヨルダンのアンマンに入り、そこからエルサレムに入りました。その途中で、ロバに乗った人たちに、何度も会いました。そのとき、「ああ、キリストが歩かれた土地に来ているのだ」という感激がありました。特に、ロバに乗っている人たちをみると本当になつかしい気持ちがしました。なぜだろうかと考えたのですが、それはきっと、ロバに乗ったイエス様の姿を、子どもの時から目にしてきたクリスマスのお話とか、美しいカードなどで見慣れていたからだと思います。初めての土地なのに、心からなつかしいと思いドキドキしたことが忘れられません。初めての土地なのに、あのように思ったことはその後、一度もありません。本当に不思議な、なつかしさでした。

 それだけに、今、あの土地が、本当にひどい状態におかれていることをたまらなく悲しく思います。もしかしたら、これは、今も、イエス様が人々のために苦しんでおられるということを示しているのかもしれません。あの辺りで、今もロバに乗って、のんびりと歩いている人を見ることは出来るのでしょうか。

 きっと難しいのでしょう。悲しいことです。