クリスマスのメッセージ

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 ヴァン・ダイク原作のお話をもとにした、絵本『もうひとりのはかせ』をご紹介します。

 主人公のアルタバンは、誕生する救い主に拝謁しようと、3人の博士と約束していました。

 しかし、彼は旅の途中で出会った病人を介抱したため、待ち合わせに遅れます。しかも出費を補うため、救い主に捧げる3つの宝石の一つを売ってしまいました。

 遅れて着くと、ヘロデ王から付近の赤ん坊をすべて殺せと命じられた兵隊たちがやってきます。彼は2つ目の宝石を隊長に渡し、一人の赤ん坊を救います。

 その後、救い主と両親が逃げたというエジプトに行って探しますが、どこにも見つかりません。

 33年が経ち、年老いたアルタバンは、エルサレムを訪れます。

 街は、イエスという男が磔の刑になることで大騒ぎでした。その人が救い主だと悟ったアルタバンは、残る宝石で助けようと急ぎます。しかし借金のために売られていく娘に出会い、最後の宝石を渡して助けます。

 突然に、空が暗み、地が揺れ動き、彼は落石で頭に怪我をします。その時、空からイエスの声が聞こえてきました。

 「アルタバンよ、ありがとう。あなたはわたしが飢えている時、食べ物を与え、のどが渇いている時、水を差し出し、病気になったり、牢にいたりした時、訪ねてくれた」

 アルタバンは驚いて聞き返しました。

 「いつわたしがそんなことをしたでしょうか。わたしは、あなたに一度もお会いしたことはなく、お役にたったこともないのです」

 すると、また声が響きました。

 「わたしの兄弟である最も小さな者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことだ」

 驚きと喜びに顔を輝かせたアルタバンは、静かに息を引き取りました。

 いつも神は、与える人を祝福されます。

クリスマスのメッセージ

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 私は洗礼を受ける前から、いつも不思議に想っていることがありました。それは「宇宙の創造主と言われている神様が何故、わざわざ地球という星にキリストという人間の姿で誕生したのか」という素朴な疑問です。

 宇宙と地球の誕生についての天文学の名作は多数ありますが、この私の疑問に答えてくれる本に遭遇したことはありません。この疑問は、理屈や論理の世界ではなく、どうも信仰の世界の問題なのかもしれません。

 私が大学生の頃、この疑問を、学生食堂でカレーライスを頂きながら、ぶつぶつ言いますと、学友は「フーン」と鼻先で笑います。数十年後のクラス会でも同じような話題を出すと「永遠のテーマだね」と相手にしてくれません。

 洗礼を受ける前、ドイツの神父さんが高校生の私に「君の疑問は生涯解決しないよ、理屈で全知全能の神様とキリスト様の関係を理解しようとしても無理、三位一体論といってね、これは難しい問題なんだ」と話されました。

 まじめな青春時代を送ってこなかった私が、どうしても気になるのが、天国にいけるかなあ、ということでした。

 その後、海外の大学で宗教心理学に基づく心理療法の勉強をしていくうちに「信じて見えてくるもの、見えなくなるもの」という研究分野に気づきます。信仰の世界の始まりです。信じると「三位一体の世界」が見え始め、その微妙な神の世界を感じだしたのです。実に楽しい世界です。深刻でもあり楽しくもあり、スリルとサスペンスに富んだ世界です。

 クリスマスが来るたびに私はこのドイツの神父さんとの「何故、宇宙の創造主が人間キリスト様として誕生したのか」という問答が思い出され、神様からのクリスマスメッセージとして私の心に響いてくるのが不思議です。


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