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わたしが抱く平和

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 夫の仕事の関係で、11歳の長女を頭に3人の男の児を連れて、アメリカのデンバー市で暮らした時、我が家には近所の子どもが大勢きて日本語と英語で仲良く遊んでいました。ところがある日、うちの次男とスカイラという子がおもちゃを取り合って喧嘩になりました。同じ5歳の腕白盛り、互いに譲りません。あわやとっくみあいかとハラハラした矢先、側にいたスカイラのママが息子を引き寄せてゆっくり言いました。

 「スカイラ、あなたももうすぐパパの仕事で南米のコロンビアという国に行くのでしょう。そこでお友達と仲良くしてほしかったら、今ヒロシと仲良くしてあげるのよ」

 すると、きかん坊の彼が案外素直に納得して、おもちゃを次男に譲ったのです。私はほっとすると同時に、スカイラのママの言葉に、人として最も大切な心を教えられた気がしました。

 「自分だけ良ければ人はどうでもよい」というのは大人も同じ、いくつになっても「我が身が一番大切」というのが人間本来の姿なのかもしれません。

 だからこそ「自分が大切なら相手も同じように自分が大切」ということ。「自分にされて嫌なことは人にしてはいけない」ということ。更に「自分にしてほしいことを人にする」という思いやりの心が、家庭でも社会ても平和に楽しく生きてゆく上で大切ではないかと思うのです。 

 このことは国と国との関係でも言えるのではないか。人に個性があるように、国も成り立ちや気候、風土によって価値観も異なります。互いの違いを認め合い、根気よく話し合って理解を深めれば、大きな欲から勃発する国の喧嘩、つまり戦争などしないで、平和に共存共栄出来るのではないか・・・私は人類の叡智に期待をかけて世界平和を祈りたいです。