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わたしが抱く平和

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 エッセイストになったきっかけが鳥の声にまつわる本だったことから、私はよく、講演で鳥の話をします。その主眼は、環境保護と世界平和です。

 これらは一見別のテーマに見えますが、実は深くつながっています。

 環境は戦闘で破壊されることもありますが、多くは、保全活動を巡る利害で世界が一致できないために破壊されているのではないでしょうか。

 著書「沈黙の春」で農薬が生物にもたらす危険を警告した海洋学者レイチェル・カーソンや、日本野鳥の会を設立して野鳥保護の法制化に取り組んだ中西悟堂氏は、くしくも似た時代に環境破壊を告発し、国際的な連携を呼びかけました。

 一方、石炭を採掘する炭鉱では、生きたカナリアが長いこと一酸化炭素検知器として使われ、苦しみを受けましたが、電子検知器の登場により法律でカナリアの使用が禁止されました。これは、人々が心を一つにしてカナリアたちの命を大切にしてくれたケースといえます。

 環境保護と文明の発展をバランスよく両立させるには、人類が心を合わせて「平和」を目指す必要があると私は思います。それは、特定の国が戦争に巻き込まれないことではなく、全人類が武器を捨て、言葉と叡智を通じて手を取り合う、スケールの大きな平和です。

 環境のバロメーターと言われる繊細な鳥たちが元気に囀る一方、人類が動物を犠牲にすることなく、技術を磨いて文明を築いていける、それが世界平和なのかもしれません。

 講演の最後に持ち曲の「青いカナリア変奏曲」をピアノで弾くとき、私はこう話します。

 「これを弾くときはいつも、カナリアのような小さな鳥たちが安心して囀れる平和な世界が実現するよう祈ります」

 これが、私の思い描く平和の姿です。