年長者と共に

シスター 山本 久美子

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 私は、5人の年長者のシスターと共同生活をしています。この生活を始めて、30年近くになり、私のごく普通の日常になっています。しかし、始めの頃は、不安と緊張、驚きやストレスの連続だったように覚えています。

 そこで、今回、何故、このような生活を続けられるのかと、自問してみました。私は、共同体のメンバーと、血縁関係にある両親や姉妹よりも、長い年月を共に過ごし、いろいろな出来事や思い出を共有し、互いを受け入れ合うことを学んで来たからだと実感しています。目に見えないつながり、不思議な安心感、帰属感のようなものが自分の中にあることがわかります。

 ジェネレーションギャップと言われるように、年代、社会背景、育った環境の違い、経験、考え方や価値観の異なり、それらの違いを受け入れ合うことは容易なことではありません。年長者も、人間としての限界や弱さに差異はありません。

 あらためて自分自身と同じ共同体に生きる一人ひとりを観ると、その人なりの経験、努力、信仰があって、神様と人々のために仕えるという同じ目的を持っているからこそ、今日まで共に過ごして来られたのだと気付きます。自分の歩みをふり返るだけでも、それなりの苦労やいろいろな経験を経て、共同体の関わり合いやよろこびも深まって来たと思えます。

 私は、時には、年長者に囲まれた共同生活に人間的な嫌気がさしたり、疑問さえ感じることもあります。しかし、一人ひとりとの関わりを通して、目に見えないそれぞれの人生の重み、個性や違いを、神様からいただく恵み、豊かさとして受け止める、心の姿勢を自然に学んでいることに気付かされ、年長者と「共に生きる」意義を教えられています。

年長者と共に

村田 佳代子

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 1983年の春、私の住む街に「老人福祉教養センター」がオープンしました。60歳以上の市民が文学や歴史、絵画や陶芸、体操など自由に学べる施設で、当時は近隣市町村から見学者も多い最新の施設でした。

 年が改まった2月、センターから電話がかかってきました。「この1年、油絵を採用したが、道具が重い、油のにおいが苦手など苦情が多い。アンケートをしたところ、水彩の方がなじみやすいというので、4月からあなたに水彩画講座をお願いしたい」

 「私も本来は油絵ですよ。子供たちにも教えているので、水彩画や工作など、色々教えますけれど、年長者に私では講師が若すぎます。」と即座にお断りしたはずでしたが、後日、教育長の来訪を受け、結局講師に就任しました。

 親子以上の年齢差ながら、毎年応募して下さる20名の年長者と共に10年間定期講座を続けました。

 引退を決めた私に、受講者有志からサークルを作って絵を描き続けたいとの申し出があり、「百人の画仲間」の会を立ち上げ、現在まで続けています。始めのメンバーの半数以上が天国へ旅立ち、新しいメンバーにとっては私が年長者ですが、90歳代も数名在籍していますので、今や絵の教室というより人生の学びの場、高齢者の生活情報交換の場となっています。

 昭和一桁世代は戦争体験者として貴重な話をしますし、二桁世代は戦後経済の高度成長を支えた自負があり、海外駐在の話や発明特許の話など、豊富な経験を踏まえ魅力的です。女性も、歴史や旅行の話で負けません。長く生きた共通点は、自覚の有無はあっても、皆、何かしら信仰心があると感じられることで、互いに聞き上手です。

 平成世代はどんな年長者となり次世代に向き合うのでしょうか。


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