うちの母って、ちょっと変わった母親でした。
小さい時はそれが不満でした。いわゆる「母ものドラマ」に登場する、何もかも包み込んでくれる、優しくたのもしい母、目の中に入れても痛くない可愛い子どものために、自分のことはさておいて尽くすタイプ・・、からは程遠いクールかつドライな母親なのでした。
学生時代に、3泊4日の縦走登山をして帰宅すると、「アラ、どこの山に登ってたの」と一言。友人のお母さんは毎日山の天気を気にして、帰宅の日はそわそわと玄関の前を往ったり来たりだったそうな。いいなあ、母性愛充満、とうらやましがったりして。
けれど10代から20代へと自我の発達につれて、子どもべったりの子離れできない母でなくてよかったーーーと思えるようにもなりました。むしろ「母の愛」に縛られることもない自由さ、また一風変わった面白いハハオヤ、と認識をあらためました。
さて、その母のぬくもり、を味わったことあったっけ、とつらつら思うに・・、ありました!お弁当です。
フタをあけるとパッチリ目のお人形のような女の子が現れます。髪の毛は海苔。くちびるは梅干し。目はお豆さん。服は玉子焼きにケチャップのリボン。それも日替わりで。
母は絵を描いたり歌を歌ったりすることが好きで、つまり自分の好きな楽しいことをする人だったのです。きっと母はあれこれ考えながらお弁当作りを楽しんでいたのでしょう。
「ノリ・サンド」と称してノリとノリの間にごはんやおかずを挟み、段々重ねにしたノリ弁。これ食べられるのかしら、と不安になった椿の花を盛った華やかな「花弁」。
これ、母なりの人生の楽しみ方。世間の常識や思惑をとっぱらって、自分らしさを生きていたのだと思います。