私の母は口数が少ない方で人が喜ぶようなことを巧みに話したりはできないタイプです。でも噂話もしません。それは母の美点だと思います。
父は素晴らしい信仰をもち、人の気持ちをよくつかむ人で社交的でした。しかし、若い時の挫折から立ち上がれないまま一定の仕事に就くことが出来ませんでした。ですから母が教員としてフルタイムで働きながら家事を一人でこなし、子育てをしたのです。
両親は、子供が勉強の面白さを知れるように出来る限り環境を整えてくれました。今思うと私は本ばかり読んであまり家事を手伝いませんでした。
母の深い愛情がわかったのは、私が結婚し、家庭をもちながら教員をするようになってからです。学校の仕事は授業の準備だけでなく、生徒指導や年間行事などがあり、大変複雑です。いったい母はどうやってこなしてきたのだろうと思いました。母の深い思い、心のぬくもりを感じたのはその時でした。
子供時代は、家に帰ったら「おかえりなさい」と言っておやつを出してくれる専業主婦のお母さまたちが羨ましかったものです。でも、母はちがうものを私たちに与えてくれたのです。たとえばどんなに疲れていても日曜には必ず家族で教会に行くこともそうです。教会で両親は生活の労苦を全て神さまに委ねて祈っていたと思います。神さまはいつも私たちを助けてくださいました。
母は人に甘えずに、するべきことを黙々とこなし、健康管理や節制をしっかりとして家庭を支えてくれたのです。こういう形の母の愛情もあるのです。