ある幼稚園のお母さんが、話してくれました。
娘さんはお母さんが大好きで、いつもにこにことくっついていましたが、ある日、お母さんは幼稚園から、娘さんが動作が遅い同級生をいじめたという報告を受けました。それでお母さんは、それは悪質ないじめだと言って、娘さんをしかりました。
娘さんは始め唖然としていましたが、すぐに大声で泣き出し、「お母さんは、私の味方ではなかったの?」と訴えたのです。それで、「お母さんは味方だから、叱るのよ。いい子になって欲しいから。」と抱きしめたのだそうです。
私も母のそのような姿を見たことがあります。兄弟4人と母とで、一緒におやつを食べていたとき、私も含めた上の3人に、母はコーヒーを入れてくれました。それを見た2歳の弟が、「僕も欲しい。」とだだをこね始めました。
母は優しい性格なので、「冷めてから飲むのよ」と言って、弟のテーブルの前に熱いコーヒーを置きました。弟は喜んで、テーブルを手でたたき始めました。その手が、コーヒー茶碗に引っかかり、弟は熱いコーヒーを頭からかぶってしまったのです。「わーん」と弟が泣き叫びました。
なんでもゆっくりする母が、そのときばかりは咄嗟に弟を抱きかかえて台所に行き、弟の頭に水をかけるや、「医者に行ってくる」と言って、家を飛び出していったのです。
そのときの母の、なんとしてもこの子を助けなければ、という真剣な姿を見て、私たち兄弟は皆、そのように育てられたのだと、有り難い気持ちと感謝で胸がいっぱいになりました。
いのちの「正義の味方」が現れた瞬間でした。