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わたしの支え

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

 週に1度、Kさんのお宅に通っています。

 彼女はこの数年、自宅のベッドの上でだけ、生活しておられる方です。

 はじめてお会いしたのは、ある聖書の勉強会でしたが、その頃はまだ杖をつきながらもご自分で歩いていらっしゃいました。

 親しくお喋りするうちに、10代の頃はすぐ近くに住んでいたことがわかったり、読んでいた本、好きな作家も同じで、考え、感じる心がふたりでひとつ、というくらい、出会いの不思議さに感激したことです。

 やがてKさんは勉強会をお休みすることが多くなり、膠原病が悪化して入院なさいました。その後退院されたものの病状は思わしくなく、ほとんど寝たきりの状態になられました。

 週1度お訪ねするようになったのは、私がインドのアシュラムで倣い覚えたマッサージのセッションを試みたのがきっかけでした。

 毎週、この日を心待ちにしてくださるKさんの、いつも明るく、幸せいっぱいというような笑顔に迎えられて、しばらくくつろいでティータイム。

 ベッドに向き合う窓からは、雑木林の木立の緑を通して光が差し込み、彼女は言います。

 「これが私にとって自然のすべてなの。朝は小鳥たちが何十羽、いえ何千羽とさえずって目を覚まさせてくれるのよ」

 この1週間の出来事、読んだ本のことなど、Kさんのていねいな新聞の切り抜きを前に話題はつきません。

 彼女のベッドは宇宙船かもしれません。ベッドの上から静かに世界を、地球を眺め渡して自由自在です。その祈りに支えられた深い人間洞察、鋭い社会時評、ときに目からウロコです。

 かたや日常生活のすったもんだを抱えて、世間を運んでゆく私とどんなにささいな事でも、しっかり受けとめて味わってくれるKさん。支えているのはどちら?