やがてKさんは勉強会をお休みすることが多くなり、膠原病が悪化して入院なさいました。その後退院されたものの病状は思わしくなく、ほとんど寝たきりの状態になられました。
週1度お訪ねするようになったのは、私がインドのアシュラムで倣い覚えたマッサージのセッションを試みたのがきっかけでした。
毎週、この日を心待ちにしてくださるKさんの、いつも明るく、幸せいっぱいというような笑顔に迎えられて、しばらくくつろいでティータイム。
ベッドに向き合う窓からは、雑木林の木立の緑を通して光が差し込み、彼女は言います。
「これが私にとって自然のすべてなの。朝は小鳥たちが何十羽、いえ何千羽とさえずって目を覚まさせてくれるのよ」
この1週間の出来事、読んだ本のことなど、Kさんのていねいな新聞の切り抜きを前に話題はつきません。
彼女のベッドは宇宙船かもしれません。ベッドの上から静かに世界を、地球を眺め渡して自由自在です。その祈りに支えられた深い人間洞察、鋭い社会時評、ときに目からウロコです。
かたや日常生活のすったもんだを抱えて、世間を運んでゆく私とどんなにささいな事でも、しっかり受けとめて味わってくれるKさん。支えているのはどちら?