すると私が所属する教会の神父様が「なんだ、あげたの。うちにもらおうと思ったのに」と仰って、「特別にうちの教会のために描いてほしい絵がある」と、当地のキリシタンが江戸殉教で天に召された歴史を話され、顕彰のミサの計画をあかされました。始め躊躇しましたが、モデルになるからと家族に背中を押され引き受けました。
私はこの時思わず1歩前にでたのです。
以来37年間、今日まで神様が望んでいらっしゃると信じて、たえず1歩前への心意気で、各地から送られてくる資料を読み、現地を取材し、展示する建物がある場合は飾る場所も下見をして、キリシタンの歴史画を描き続けています。
出来ませんと断ることは自分への裏切り、困難を抱えながらも絵筆を握って努力してきた日々の恵みと支援者への感謝から前へ進みます。画集「神の絵筆」の名付け親も件の神父様でした。
2008年、ペトロ岐部と187殉教者が列福された日、私は既に100人以上描いていた事を確認し感慨無量でした。次にたえず1歩前へと選んだのが長崎、平戸、島原、五島を描く事でした。昨年それらの地域が世界遺産に登録され一件落着、188福者の10周年も嬉しい事でした。