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たえず1歩前に

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 「1歩でも前に進むよう、常に努力していなさい」と言われると、大変な重荷を背負わされたように感じてしまう。常に頑張り続けるなんてつらい、楽をしたり、休んだりしたいと思う。

 だが「たえず1歩前に」進むのは、実は人間の本性によく合っているのである。人は、新しいスキルを身につけたり、学んだりして成長していくのを喜びとする生き物なのだ。私は勉強嫌い怠け者ですからと言う人も、趣味においては努力を重ねていて、見事な技を持つ達人であったりする。

 私は子どもの頃、自転車に縁がなく、乗れるようになったのは、30代も半ばだった。大人のための自転車教室を見つけ、そこで乗り物に乗るコツを丁寧に教えて貰い、半日頑張って、とうとう道を走れるようになった時の嬉しさは忘れられない。ペダルを踏んで進めば進むほど、世界は大きく広がっていき、新しい自分が始まったようだった。

 練習したのは半日だったけれども、自転車に乗りたかった幼い日から数えれば、30年の年月がある。諦めず願い続けることで、私は望みが叶えられる時へと、1歩ずつ近づいて行っていたのかもしれない。

 幸福に生きる秘訣の一つは、日々の中に小さな喜びを見出すことだと思っている。その喜びが、1歩ずつ自分が成長していける喜びであれば、なお良いと思う。散歩の途中で、道端の花を見るのも喜びだが、自分で育ててみれば、喜びは深いものになる。咲いた花を誰かに贈れば、今度は人に喜んでもらえる。新しい世界と新しい自分が始まるのだ。日々が続くように、私たちもたえず、1歩ずつ進んで行く。前へ、幸福の中へ。