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たえず1歩前に

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 だいぶ前のことです。新聞に、ある商社が、普通の社員を2年間だけ会社の役員として抜擢し、働いてもらう制度を持っていることが紹介されていました。役員会にも出席し、専門のテーマにも取り組み、そして2年経ったらもとの職場に復帰するというものでした。

 そしてその記事は、もとの職場に帰った人が、今までとは違った視点で物事を見、感じることができるようになったと指摘していました。それは、役員会の中で全体を見る感性が養われ、自分の立ち位置が見えてくること、そして、自分のそれまで何の脈絡も感じなかった仕事が、大切な会社の1部であることを実感し、会社への愛着と会社が発展することを意識するようになったということでした。

 新年の想いもこれに似たところがあります。いつも目の前のことに精一杯生きている中で、あれも失敗したなあ、これもうまくいかなかったなあとがっかりしている思いが積み重なったとき、でもこの1年を見通す目で考えると、結構自分のやりたいことが実現できたなーと、新年ならではの充実感と、次の1歩へのやる気がわき上がっていきます。

 また、いろいろ新しく始めたことを振り返ると、あの人との出会いが、新たな1歩を踏み出す機会を与えてくれたなあと、自分だけの世界に閉じこもらなかったことを有り難く感謝し、人々や出来事との出会いの大切さを実感しています。

 そして全体を見る目、人生を俯瞰する目によって、今の自分でいいのだと、あまり変化がなかった1年であったとしても、その中に価値をまた見いだすわけです。

 新年の持っている豊かさは、ペースを変化させ、視点を動かし、未来の可能性を考える機会となります。