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子どもの祈り

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

 私の孫、杏奈ちゃんはママが大好きです。

 杏奈ちゃん4歳の秋のことでした。ママの具合が悪くなってしまいました。起き上がると吐き気が襲ってくるので、横になったままです。これまで一緒に遊んだり、本を読んだりしてくれたママが辛そうです。どうして良いかわからない杏奈ちゃんは、ママの隣で静かにしていようと決めました。

 「ママの病気が早く良くなりますように」。祈りが届いたのでしょうか、ママの調子が少し良くなりました。幼稚園のお迎えもできるようになりました。するとママから教えられました。

 「杏奈ちゃんは、お姉さんになるのよ」

 ところがあと2か月で生まれるという3月になって、ママは病院に入院してしまいました。入院して安静にしていないとママの命も赤ちゃんの命も危ないのだそうです。大変です。

 これまで杏奈ちゃんはママと離れて寝たことがありませんでした。パパは杏奈ちゃんのために、家で仕事ができるようにしてくれました。ママに会えるのは、1週間に1度の面会だけです。寂しくてたまりませんが、頑張りました。

 4月の半ばになり、ようやくママが赤ちゃんを産む日になりました。病院の待合室で待っていると、保育器に入った赤ちゃんが連れてこられました。杏奈ちゃんに弟ができたのです。

 8日ほどたって、ママと弟は無事退院してきました。杏奈ちゃんは弟が泣くとママに知らせたり、おむつを持って行ったりします。弟が可愛くてたまらないようです。

 杏奈ちゃん5歳の誕生日になりました。「大きくなったら何になる?」ママが聞くと、「お医者さんになる」と答えました。

 七夕になりました。杏奈ちゃんが短冊に書いたのはこんな言葉でした。

「ママを守れますように」