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子どもの祈り

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 「心を入れ替えて子どものようにならなければ、決して天の国に入ることはできない」(マタイ18・3)とイエス・キリストが聖書の中で語っているが、幼稚園で働いていると、確かに幼い子どもたちは天国に近いところにいると思うことがよくある。

 たとえば、幼い子どもたちは、互いに競い合うことがない。むしろ、他の子が頑張って何かできるようになると、まるで自分のことのように喜んで、「〇〇ちゃん、あれができるんだよ。すごいんだよ」と報告しに来る。

 おそらく、幼い子どもたちは、自分が親や先生たちから愛されていることに、何の疑問も抱いていないのだろう。「自分は愛されている。愛されるために、他の子と競い合う必要などまったくない」と確信しているからこそ、何のこだわりもなく、他の子のよい所を喜べるのだ。そのような子どもたちは、他の子が泣いているときには、「どうしたの」と優しく声をかけられる子どもたちでもある。心を満たした愛が、苦しんでいる友だちに向かって自然に流れ出してゆくようだ。

 残念ながら、そのような子どもたちでも、年中、年長と成長してゆく中で、友だちと競争し始めることがある。兄弟姉妹が生まれたり、他の子と比較されたりする中で、しだいに自分が愛されていることに確信が持てなくなり、愛されるためには人と競わなければならないと思い始めるようだ。

 イエスが言う「子どものようになる」とは、幼い子どものように、自分が神様から愛されていると何の疑いもなく信じることだろう。他の子には他の子のよさがあり、自分には自分のよさがある。みんな神様から愛されたかけがえのない存在なのだから、競い合う必要などまったくないと確信できる心を、幼い子どもたちに学びたい。