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子どもの祈り

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 幼い子どもには、恐いと感じるものが沢山ある。私も幼い頃は恐がりで、守護の天使が一人一人についていてくれるのだと聞かされて、安心はしたものの、不安や恐怖は完全には消えてくれなかった。子どもは自力では生きられない弱い存在なので、身を守るために感じやすく出来ているのである。それで幼い私は、困った時やつらい時には、守護の天使と一緒に、よくお祈りをした覚えがある。子どもの祈りとは、弱き者の切実な願いなのだと今でも思う。

 詩人で童話作家のエリナー・ファージョンによる「ちいさなもののいのり」は、こんな言葉で始まる。

 「かみさま、どうぞちいさなものたちをおまもりください。/まだはねのはえていないものたちを。/おおきくなって つばさをひろげ/おおぞらをおもいのままにとべるまで。」

 子どもたちはまだ飛べない。けれども、いつか大空を自由に飛べることを信じ、希望を持っている。私たち大人は、子どもと一緒に子どもの夢と希望も守り育てるのが務めなのだ。それはどんなに嬉しい仕事だろうか。子どもたちが幸福になる姿が見られるのだから。

 祈りはこう結ばれている。「このちいさないのりをどうぞおこころにとめてください。/あなたのおまもりをねがう/おおきなものたちのいのりとおなじように」。そう、子どもたちが祈るのは、大人たちが祈る姿を見るからなのだ。

 まず私たちが祈りたいと思う。子どもたちが幸福であるように、その手助けをすることが、私たちの幸福でもあるように。そう祈る時、合わせる掌はよき願いを包み、灯のように明るむことだろう。