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子どもの祈り

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 イエスは、御父なる神様に「アッバ」と呼びかけられました。この「アッバ」という言葉は、イエスが使われていたアラム語で「お父ちゃん」という意味です。

 天の父に「アッバ」と呼ばれたイエスの「子ども」としての父への親しみと信頼が如実に表わされる言葉です。

 イエスは、十字架上の極刑の苦しみにあっても、「アッバ」と叫ばれました。イエスにとって、苦しみの最中でも、全幅の信頼を寄せ、心の底から呼びかけられる御父とは、深い絆で結ばれた存在であったことがわかります。

 大人になった私たちは、次第に「子どもの心」を忘れ、正直な本音の気持ちを自分のうちに抑えて、自他共に求められるような社会生活を送っているところがあると思います。どこかで、「本音は吐露してはいけない」という縛りや緊張の中で生きているとも言えます。

 しかし、誰にでも、どこかに「子ども」のような本来の自分らしさがあります。高齢になると、「子どもに帰る」と言われるのは、もはや周りに、社会生活に適合しようというコントロールが効かなくなるからでしょう。

 イエスは、どんな時も、御父に対して、本来の「子どもの心」でいることができたのではないでしょうか。と言っても、イエスが子どもっぽい人だったというわけではありません。自分の正直な心をよく見つめ、それを御父に差し出し、心を開くことができたのです。

 聖書には、祈るイエスの姿が描かれていますが、それは、イエスにとって、「あるがまま」の自分自身でいられる御父との出会いの時だったのです。私たちも、イエスのように、「アッバ」である御父に「子どもの祈り」を捧げたいものです。