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子どもの祈り

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 教会にいるといろいろな誘いがあります。だいぶ前のことでしょうか、「最後の誘惑」というイエス・キリストの話が流行ったときがありました。イエスが女性と一緒に暮らすというスキャンダラスな物語から、欧米では映画のボイコットが叫ばれていました。

 見るべきか見ざるべきかと私は悩んでいました。そんな時です。ある男性の信者さんから「この映画とてもよい映画です。是非とも見てください。」とチケットを渡されたのです。

 その彼は、その映画が話題になる直前にクリスチャンになっていましたが、それ以前は、クリスチャンに対して良い感情を持っていませんでした。

 彼は、結婚し、娘をキリスト教の幼稚園に通わせていました。その関係で、お母さんがクリスチャンになり、よく子供と一緒に教会に通っていましたが、それをあまり快く思っていませんでした。

 そんなある日、娘が近所に遊びに出て交通事故に遭ってしまい、すぐに病院に搬送されましたが、手遅れでした。

 彼は、冷たくなった小さな娘の前で、泣き続けました。そのとき自分がどれほど娘を愛していたかに気づいたのです。

 娘のために何かしてやりたい、そう思った彼は、その子の生前の姿をいろいろ思い浮かべてみました。すると、いつもその子が、家にあるイエス様の御像の前で、手を合わせて祈っていたことを思い出したのです。

 とても愛らしく、真剣になって祈っている姿、そこに何かあると彼は考え始めました。

 そして、1年後、奥さんに勝るとも劣らない熱心なキリスト者になっていたのです。

 子供の祈る姿、そこには何物にも代えがたい真実があるのかもしれません。