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わたしのクリスマス

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

 毎年、必ずクリスマスの季節がやって来て、12月25日にはイエスさまのご降誕をお祝いします。わたし達の救いのために、神のおん子がお生まれになったーーと意識することなくても、全世界でメリー・クリスマス!と祝われるその日その夜。

 人生にもそれぞれの季節があり、そのときどきのクリスマスが巡ってきますね。家族でなごやかに祝うクリスマス。恋人とのふたりきりのクリスマス・イヴ。ひとりひっそりと過ごす静かなクリスマス。

 あの年は12月25日が平日ではなく、週末にかかっていました。

 土・日といえば観光地のホテルやレストラン、飲食店はかき入れ時。「ちょっとミサに行ってきます」と言って、その仕事場を抜け出すことは出来ません。日曜日のミサに与ることさえ難しいというのに。

 

 あきらめてはいたものの、洗い場でお皿を洗いながら、(ああ、もうミサが始まる時間だわ・・今ごろはローソクを灯して聖歌が歌われて・・・)と、美しく荘厳なミサの情景が思われてなりませんでした。

 その数日後、仕事場に向かう途中、ひとり祈りたくて、街中の教会に入ったわたしに、お年寄りのシスターが近づいてこられ、にっこり会釈をしてくださいました。その包み込むような笑顔に心がほどけ、クリスマスのミサにも与れなかった辛さを打ち明けてしまったのです。

 シスターはじっと耳を傾けてくださると、「ご聖体を頂きたいでしょう?ちょっとお祈りしながら待っていらしてね」と。そして、祭壇の聖ひつからご聖体を取って拝領させてくださったのです。なんという贈り物!

 行きたくともミサに行けないたくさんの人々を思う、もう遠い日の出来事となった忘れられないクリスマスです。