2018年11月08日の心の糧


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分岐点

服部 剛

今日の心の糧イメージ 今春、我が家は横浜から都内に引っ越しました。引っ越しの日はちょうど復活の主日で、朝は地元の教会でミサに与りました。

ミサ後のお祝いのパーティーで、私は皆さんに挨拶をしました。

「息子の周がダウン症の告知を受けた頃から私達に温かいまなざしを注いでいただき、本当にありがとうございました。行ってきます」と、深く頭を下げました。皆さんは口々に「寂しくなるわね」「お元気で」「また来てね」と声をかけてくださると、まだ言葉を話さない6歳の息子は別れの雰囲気を感じたのか、いつになく大声で泣き始めました。それは心の底から「寂しいよ!」と叫んでいるようで、息子の気持ちを分かち合う周囲の人々も気がつくと涙ぐんでいました。

夕方、沢山の家具を車に積んだ私達は、昨年の夏に亡くなった義父との思い出の詰まった家から旅立ちました。助手席で息子を膝に乗せた私は「周はお父さんに可愛がってもらったね...」と運転する妻に語ると、「ええ」と感慨深げに頷きました。

引っ越し先の家に着いた頃には日も暮れて、私は「我が家の第2章、よろしく」と妻に手を差し出しました。すると、膝の上で気持ち良く眠っていた息子がスッと手をのばし、3人の手は結ばれーー思わず夫婦で目を見合わせてしまいました。

この日に至るまでの6年間、多くの困難がありました。しかしながら、哀しみの最中にも密かな導きはあり、私達は今、新たな1頁を迎えています。

明日の朝も、私はピカピカの1年生になった息子の手を引き、妻と一緒に、特別支援学校の送迎バスが来る場所まで歩きます。そして、妻の抱っこに満面の笑みを浮かべてから、息子はバスに乗り込み、新たな出逢いが待つ学校へと向かいます。