夜中にトイレに行くときには、母屋から離れたところにトイレがあったので、祖父がわざわざ起きてついて来てくれたのを、はっきりとまだ覚えています。
人間、自分を大切な存在として、周りから認められ、関わられたこの小さい頃の体験は、不思議と根強く残っているものだと感じます。それは、人生の中で非常に厳しいときにも、「まだ大丈夫」という自己肯定感を生み出します。
だから、茅葺きの家、家の横にある公民館と広場、そこを流れる小川、その小川でタニシを捕ったこと、自転車でそこに転落したこと、家から見えるバス通りと川とこじんまりした山、あの故郷を思い出すたびに、自分の中にある「これでいいのだ」という思いを強くしているのです。