故郷とは、自然の懐に帰る所、なつかしい人々の愛情に包まれる所、そして子どもの頃の記憶が眠っていて、思い出せば昔の自分に会える、そんな場所ではないかと思う。
人が生まれるということは、そう驚くようなことではない。国連データからの推計によれば、現在、地球上で1日に誕生する人の数は約20万人だそうだ。だが、その1人1人に、生まれた場所があり、そこが故郷という特別な場所になって、その人を勇気づけ、心を温め続けていくのは、驚くべきことに思われる。
愛され、育てられた記憶が、その土地を特別なものにする。不幸な記憶もまた、その土地を人の心に強く刻みつける。人生の物語に1篇として同じものはない。だが、それらは皆、故郷から第1章が始まっているのである。