2018年10月16日の心の糧


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わたしの故郷

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ 長野県茅野市の中学校で授業をしたときのこと、体育館で私を歓迎してくれた生徒さんたちは、見事な合唱で童謡「故郷」を歌ってくれました。長野県中野市がこの歌の舞台だそうで、茅野の風景はまさに歌の通りでした。彼らはすてきな故郷をもっていて幸せだと思いました。

この歌は、歌詞にあるような風景を経験しているかどうかにかかわらず、日本人の原風景として広く受け入れられています。ウサギを追うことはしなくても、両親を思う心は誰にもあるし、志を実現して帰りたいという決意も理解できるからです。

それでも、私はどうも、この歌を自分の故郷の感覚として歌えずにいます。というのは、私は東京に生まれ育ち、留学以外ほかの場所でくらしていないからです。ゴミゴミしていて空気が悪く、通勤時には殺気立ってしまう人たちが住み、生き馬の目を抜くと言われる大東京。のどかな所から来た人には何年住んでも故郷とは言えないかもしれません。

でも私には、この大都市が故郷です。郊外に近い武蔵野地域も、働き、学んできた都心も、たまに訪ねる下町や上野も、私を育んでくれる故郷です。

日本にも、残念ながら故郷が汚染され、帰れなくなる人が出てしまいました。それでも、そこはこの方たちの故郷です。戦争や弾圧を逃れて外国に移り、帰れる望みの薄い故郷を思う人々にとっては、たとえ戦火にまみれていても、祖国が故郷です。故郷は、美しい原風景に限られないのです。

イエスが故郷だと教える天国には神様がおられますが、地上の故郷は私たちに託されています。いまを、未来を大切にするためにも、多彩な故郷の姿を受け入れ、大切にし合って行きたいものです。