祖母はこの出来事を何度も母などに話していた。この出来事が祖母にとって、救いになっていたようなのだ。12歳で母親を亡くし、親類を転々として育った祖母の生い立ちを知るにつれて、わたしは小さくても祖母の心のふる里になっていたのかもしれない。
今、私も祖母の年齢に近くなってくると、幼いときのような無垢な行動はできなくなっている。日々、寂寞とした思いに駆られるというのが正直なところだ。それでも、あの幼い時のように、小さなことを大切に生きることができるなら、いつか天のふる里に迎えてもらえるかもしれないと、希望を抱くようになった。