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わたしの故郷

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

「兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川」。だれもが歌い、知っている歌、 故郷を懐かしむ歌ですが、この故郷の麗しい風景は、今やおいそれと容易に見られなくなってしまいました。どこの故郷も、急速に進む人口の過疎化とともに、故郷の美しい「ムラ」が消滅の危機にさらされています。当局の調べによりますと、全国で、5000もの「ムラ」が、消滅してしまいました。島根県では、県内の80パーセントが過疎地になっているとのことです。予想以上に進む過疎化の進展とともに、大勢の人々が故郷を失い、故郷のない人々が増えることは、たいへん残念な悲しいことだと思います。

ところで、わたしの懐かしの故郷は、大阪府豊中市。小学校3年生まで豊中で過ごし、その後、父の勤めの関係で香港に転居、5年生まで香港日本人小学校で学びました。帰国後、6年生からは東京の国民学校で学び、その後、大学まで東京で過ごした次第です。

故郷の第1の定義「自分が生まれた土地」から言いますと、わたしの故郷は大阪。第2の定義「かつて住んだことのある土地」から言いますと、大阪、香港、東京、そして最後に、国際交流基金から日本語教師として6年間派遣された、スペインのマドリードが、わたしの第3の故郷ということになります。故郷への懐かしみは、恐らく永遠で、故郷は、思い出とともに、永遠、憩いと安らぎの場であります。同時に、親族、友人、知人とともに、愛情・友情に満ち溢れた故郷は、人生・幸せの温床であり、幸せ満喫の場でもあります。

人生にとって、故郷は、掛け替えのない、なにより大切、貴重な場であることを改めて肝に銘じたいと思います。