春子さんは、朝から夜まで、拭き掃除をはじめとして、私たち小さな4人姉妹の世話など何くれとなく働いてくれるのでした。週末になりました。彼女は私たち家族に向かって言いました。
「明日は教会へ行きます。朝早いので、黙っていきますが、心配しないでくださいね」
翌朝、私は早起きして、彼女を見送ることにしました。出かける準備をしている荷物の中に、不思議なものを見つけました。紫色をしたガラス玉が並んでいてどうやら、首にかけるもののようです。
「わー、きれいな首飾りね」と私。
「これは、ネックレスではなくてロザリオっていうのよ。お祈りをするときに使うの。ほら、こんな風に、指先で球を持って祈ると、次の球を持ってまた祈るの。」
春子さんは、ロザリオを手渡してくれました。ひんやりして、厳かなものに感じました。
「何を祈るの」
私の母の病気が早く治りますように、何回も祈っているというのです。
それを聞いて、私は母のために何もしていないことに気づきました。彼女が家を出た後、自分の部屋へ行きました。私は心の中でロザリオを思い浮かべながら、母の病気が早く治りますように、と何度も何度も祈ったのでした。