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わたしの好きなみ言葉

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

「試験に落ちたらどうしよう」「仕事がうまくゆかなかったらどうしよう」などと先のことを心配して思い悩んでいる人々に、イエス・キリストは、「空の鳥をよく見なさい」(マタイ6・26)と語りかけた。鳥たちは社会的な成功をおさめているわけでも、立派な仕事をしているわけでもない。それにもかかわらず、神様は毎日の糧を与えて養って下さっている。鳥たちでさえそうなのだから、もしわたしたち人間が失敗し、何もできなくなったとしても、神様は必ず生きてゆくために必要なものを与えてくださるに違いない。先のことは神様の手に委ねて、鳥たちのように、1日1日を精いっぱいに生きなさいというのだ。

そもそも、先のことをあれこれ思い煩ったところで、明日まで生きている保証さえわたしたち人間にはない。それどころか、1分先に何が起こるかさえ予測できないのが人間の限界だ。先のことをあれこれ思い煩っても、ほとんど意味がない。わたしたちにできるのは、与えられた今この瞬間を精いっぱいに生きることだけなのだ。

仕事に追われ、様々なことに思い悩む日々の中で、わたしたちは空の鳥をじっと見たり、道端の花に目をとめたりするゆとりを失っている。そんなとき「空の鳥をよく見なさい」というイエスの言葉を思い出したい。鳥や花、空をゆく雲の美しさに魅了され、時間を忘れて大自然と向かい合っているうちに、日々の生活の思い煩いで疲れ切った心は少しずつ癒されてゆく。そして、あわただしい生活の中で忘れていた大切なことを思い出すのだ。

わたしたちは神の愛の中で生きている。先のことなど何も心配する必要がない。そのことをしっかり心に刻み、1日1日を精いっぱい生きてゆきたい。