「取りに行くのめんどくさいなあ」と思って、ポケットに手を突っ込んだそのとき、私の手がロザリオに触れたのです。そして私はひょっとしてと思い、そのロザリオの金属の十字架の長い方を、楽器倉庫の鍵穴に差し込んでいたのです。回すタイプの簡単な鍵だったので、すぐに楽器倉庫は開きました。
それが、私のロザリオの悲劇の始まりでした。度々、鍵代わりにロザリオの十字架を使ったので、すぐに私のロザリオの十字架にあるイエス像が壊れ、はずれてしまいました。また、鍵代わりに回すのですから、十字架の長い方は、ねじのように曲がったままになりました。
壊れた美しくない私のロザリオは、その後40年近く、私の側にいました。何時も側にいるから、新しいものを貰っても交換する気になれず、不思議と壊れたロザリオが私のもとに残るのです。
そんな話を10年ほど前に洗礼を受ける予定の人にしたら、「その壊れたロザリオを下さい」と言われ、あげてしまいました。その後は、じわじわとその寂しさが押し寄せてくるこの頃です。