私達もいずれここに名を連ねることになるはずですが、今はそこへの渡り廊下とでもいうところに差しかかっているのでしょうか。というのは、私も停年という新しい世界を経験しつつあるのです。けれども、学校で指揮を教えるのはやめましたが、演奏活動は続けているので、世の中のお父さん達の完全な停年とはまた、かなり違うかも知れません。
例えば、今週は、ソリスト、合唱団、オーケストラという大人数でリハーサルを行い、数日後にバッハの3時間以上もかかる大作、「マタイ受難曲」の本番を控えています。それが終われば、完全にマイペースでのんびり停年でいられるのかというと、これが全然そんなことはない訳です。指揮者としては、まだ現役でいなければならないという事は、リハーサルと本番にかけなければならない曲を勉強して、つまり、考えたり心の中で何度も何度も繰り返したりして、自分の血肉にするという作業をずーっと続ける事を意味するので、これがさすがにお年の私にこたえないわけはありません。
ですが、これは私は好きですから、まだ続けられます。少なくとも、当分は続ける気持ちもあります。
ただ、若い頃のように出来るはずだと、闇雲に体力、記憶力を過信してはいけないでしょう。周りの人々が心配してくれるのを、有難く、謙遜に受け止めて一歩を踏み出したいものです。