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繋がり

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

ある仕事で出会った大学3年生のAさんは、初めての打ち合わせのときからとても自然で、人見知りな私のほうが気後れしてしまうくらいでした。かといって、世間ずれして人のあしらいがうまいというのではなく、本当に素直に、分からないことは質問し、さりげなく助けの手を差し伸べてくれるのです。

ところが話を聞いてみると、彼女は家族に大きな問題を抱えていました。母親は一種の発達障がいで、家族とも仕事仲間ともあらゆる場面で衝突するのだそうです。

子育てにおいては、子どもの気持がまったく分からず、過剰に干渉して大学やアルバイト先まで様子を見に行くなどします。そのため、息子さんはコミュニケーションに問題を抱え、卒業後もフリーターのままだそうです。

妹のAさんは首都圏の大学に入り、北陸の地元を離れましたが、未だに母が頻繁に泊まりにくると言います。お兄さんが仕事に就けないため、Aさんは仕送りをもらわず自分で学費を払い、生活しています。そんな背景をもっていても、彼女は明るく振る舞い、私を見事にサポートしてくれただけでなく、道で出会ったおばあちゃんの言葉に自然に応じるなど、核家族育ちの私にはとてもまねできない見事な呼吸で高齢者と会話しているのでした。

惜しげなく人に与えるAさんの性格が、かわいがられる所以なのでしょう。素直だから、苦労話も気になりません。同情してもらうのでなく、自分の力で共感を得る努力をしているのです。

家族に問題があろうと、苦しい過去を抱えようと、心を明るくして開く意思さえあれば、良いつながりは築ける。つながれない理由を探す前に行動すればいい。これが、彼女に教わった「つながり術」でした。