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村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

私が主宰してきた美術教室は来年創立50周年を迎えます。

大学の恩師は美学美術史の分野で我が国有数の学者でしたが、ある時「美意識について大人になった君たちに学問として講義しても空しいと思うことがあるよ。美意識は子供の頃の本物体験こそが大切なんだ。このままでは日本人はこれから海外の美術品で高い買い物をさせられるぞ。僕は子供達にこそ見せたい、連れていきたい。本物を見抜く目は子供の教育次第だ」と言われました。その教授の指導のもと開設した教室です。

原則、子供たちの制作態度は評価しても作品の評価はしない、世界の名画について、子供たちに紹介し評価させるというユニークな方法で、3歳児から指導していましたが、10年を過ぎるころから成人の入会が相次ぎ、現在は大人だけになりました。私自身画家になり、国際展などで評価される立場であり、一方、国内では、児童画はもとより団体の公募展の審査員を務めることも度々です。

評価される場合、素直に嬉しい場合と、作者として見てほしい処と噛み合ず違和感を覚えることもあります。

評価する側に立った時は、出来るだけ、作品を通して見えてくる作者を捜すことを心がけます。公平を期すために年齢も性別も伏せて、作品番号だけで審査する場合が多いのですが、後で私がこんな作者ではというと大抵当たっていて、主催者から「よくわかりますね」と言われます。色彩、構図、描写力で技量と作品傾向は解りますが、それだけで評価はできません。まず、モチーフに作者の趣味や生活感が現れ、サイズと画材の扱いから年齢やキャリアを察し、テーマがありメッセージが感じられれば作者登場です。

何事も表面的な評価ではなく本質に迫りたいものです。