バラもそうでした。数年前、強風で横倒しになったのを何度も起こして水をやり、日光に当てていると、弱っていてもどうにか生きているようでした。バラは何年も花をつけませんでしたが、あきらめずに見守っていると、ある年、ハッとするほど美しいオレンジの花を一つつけました。感動しました。バラは生きていて、何年も咲こう、咲こうとしていたのです。
植物は生きようとすることを決して途中でやめません。コンクリートの隙間のような過酷な場所でも花を咲かせ、何とかして生きぬくのです。
年を重ねて思うのは、何ごとも早急に決めてしまわない方がよいということです。特に、言葉をもたない命には「待つこと」が大切です。待てるようになったのは、自分も若い頃に比べて動作が遅くなったことも関係があるでしょう。
高校生の時、スーパーで小銭を出すのが遅い母を見て、「どうして早くしないのかな」と不思議だったのを覚えています。今はわかります。指先が素早く動かず、小銭がつかみづらかったのです。
私も人に待ってもらうことが増えて、待てるようになったのかもしれません。