6年前、私は横浜から北海道へ移住しました。動物を飼って暮らすのが夢だったからです。今では8頭の羊飼です。
羊を飼い始めてわかったことがあります。羊は戦後、日本中で飼われていました。その数なんと100万頭。それが現在、1万頭にまで減ってしまったのです。100万頭いた時代は、羊の毛刈り屋さんや、毛刈りした羊毛を染めて布地にしてくれる染め屋さんがいたそうです。その羊毛で学生服を作ったり、セーラー服を作ったりしたという話を近所の農家の方から聞きました。ところが、外国から安い羊毛が入るようになって、あっという間に羊は減ってしまったのです。
我が家の羊たちは、桜が咲く頃に毛刈りをしました。1頭当たり平均3キログラムの毛が取れます。今年は5頭から16キログラムの毛が取れました。
羊毛文化を再発見してもらおうと考えて、私は村の一角に「大沼羊文化研究所」を作りました。羊毛細工の先生も見つかりました。10名ほどの村人たちが月に一度集まり、羊毛細工や、編み物をしています。
羊の毛に触っていると、小さな子供ばかりでなく、大人も気持ちが落ち着くのです。日本でほとんど滅びてしまった羊毛の文化をもう一度見直してほしい。羊文化の普及が、70歳になった私のささやかな社会貢献ではないか、と思うこの頃です。