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子育ての実り

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

シスターである私には、子育ての経験はありません。しかし、友人や職場の同僚たちが、子どもを授かり、出産し、子育てをする様子に感心したり、感動したり、不思議に思ったりすることが度々あります。そして、何よりも子どもが育っていく過程もさることながら、子育てを通して、人が「親」に成長していくプロセスは素晴らしいと思います。「子育て」は「親育て」と感じます。

シスターになる前、年上の女性からハッとさせられることを言われました。「シスターは、自分の子どもを産んだり、育てたりすることがないから、意識的に大人になるための心がけが必要」というアドバイスでした。修道生活を続けていますと、その人が言わんとしたところが身にしみてわかるように思います。

母親になっている友人たちは、無理なく子どもや家族を中心に考えることが身についていると、折に触れて感じます。シスターの場合は、自分の家族でなく、神様を中心にした霊的なつながりを大切にし、何時でも何処でも、自由にあらゆる意味での隣人、他者に奉仕することを考えるはずです。

しかし、現実的には自己中心的になりやすく、自分の時間や都合を優先させてしまう誘惑に度々遭っています。

シスターであるが故に心を開き、助けを求めてくださる人々の出会いを大切にし、喜んで時間や労力、神様からいただく賜物を分かち合っていくこと。時には、苦い思いをしたり、自分の都合を後回しにしなくてはいけないことがあったりしても、そういうことが、神の国の実現のために、血縁関係を越えた愛の交わりに招かれる、奉献生活者としての使命であり、それに応えていくことが「実り」だと思っています。