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愛でる

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

語彙が豊かな人にとって、春の季節の自然界は、詩にしたり、俳句に詠んだりする格好の題材ではないだろうか。心も体も躍動感を感じてしまうのでは・・。

辞書で「愛でる」を調べると、「美しいものを見て、一時他のことを忘れて楽しむ」とある。つくづくそのものを眺めながら、そのものの気持ちに浸ってしまうのであろうか。

どこの国でもいえることであるが、他者に誇れる自然の景色、宝物等がある。もちろん、日本においても。

そもそも日本人は、昔から「三」にこだわってきたという。神話の時代から「三種の神器」が権威の象徴であった。江戸時代には、「御三家」が力を発揮し、高度成長期には「新・三種の神器」がもてはやされた。こうした日本人の「三好き」が生み出した「三大○○」が多くの分野で存在する。

その中に、日本三景」がある。江戸初期の儒学者林羅山の三男・鵞峰が「丹後天橋立、陸奥松島、安芸厳島、三処を奇観と為す」とその著書に書いたのが日本三景の始まりとされている。

現在でも、多くの人びとが訪れる場所である。現場に行って景観を楽しみ、感動する。一方で、その景色を維持すべく裏方の働きを忘れてはいけないだろう。マツクイムシの予防と駆除、白浜の浸食に伴う地形の維持、自然災害からの修復再建等。

わたしたちが、目の前に展開される絶景を見て愛でるのは、自然の賜物があってこその恵みであるが、さらに、わたしたちとは違った形で、自然を愛でる裏方さんたちの存在が、わたしたちの愛でる豊かさを増してくれる。

そして、わたしたちは身も心も健やかに、晴れ晴れとして、人としてもより豊かになっていく。神が望む自分を心して、・・。