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先取りする

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

言葉には、いろいろな反応があります。「先取り!」というと、「図々しい!」「おこがましい!」「やめてくれ!」というネガティブな言葉が出て来そうですが、これが「時代先取り」という言葉になりますと、途端、「先取り」の意味合いは、ポジティブになり、日進月歩に絶対不可決な肯定的な言葉となります。

カルタ取りは「先取り」の典型的遊びと言えますが、ゲームやスポーツの世界では「先取り」は、絶対必要要件、これなくしては、勝負になりません。それに、勝負事では、年齢も重要視され、若いほど、評価は高くなります。最近、各界に、それぞれ卓越した若い人が輩出、その世界の最長老や大先輩の記録を破った事例が、あちこちに、みられます。

かたやビジネスの世界では、「先取り」が 必ず成功するとは限らず、後発に、追い越されるケースも少なくないようです。事業では、「先取り」のタイミングが重要で、慎重さを必要とします。

ところで、全く次元の異なる話ですが、人間の人格形成について「大器晩成」という言葉があります。「大器晩成」について、辞書は、「鐘や鼎のような大きな器は簡単には出来上がらない。人も、大人物は、才能の表れるのは遅いが、徐々に大成するものである」と説明しています。また、聖書には、「後の者が先になり、先の者が後になるであろう」(マタイ20・16)という言葉がみられます。これは、天の国は「年功序列」ではなく、後から救われた人たちも、先に救われた人たちと同じ祝福が与えられると説いているのですが、人生、常に悔悛の情を失わず、大器晩成を期したいものであります。