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繰り返し

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

繰り返すという行動には、やるべきときと、避けるべきときがあると思います。

繰り返すことによって進歩できるなら、大いにやりましょう。たとえば楽器の演奏や踊り、書道のように、体で練習する必要のある技術。

私はピアノがそれに当たります。たとえ1年間、毎日同じ曲を練習していても、まったく飽きません。一見繰り返しているようでも一度として同じ繰り返しになってはいないからです。一度行うごとに発見があり、進歩があるとき、繰り返しは繰り返しではないのです。

一方、本来は必要かもしれないけれど、できれば避けたほうが良い繰り返しがあります。それは、不安や懸念など、マイナスの感情を伴う話です。不安を解消したいとき、何度も同じことを人に聞いてもらい、自分自身で確認したり、消化したりして気持を落ち着かせる必要に迫られることがあります。

本人には必要なことなのですが、それに甘えてしまうと、自分の力で不安のループから抜け出せなくなることを学びました。不安なときほど、ループを断ち切って飛び出すのは難しく苦しいことです。でも、何度繰り返しても、このループから解放してくれるのは自分自身なのです。分かってはいても、なかなかできません。しかしできないとしても、避けたいという気持を持てるだけでも、自覚なくループに捕らえられているよりずっと良いのではないかと思います。

人類の歴史においても、多くの人が望まないのに繰り返されてしまう悲劇があります。これもまた、私たち自身が力を振り絞って断ち切るべきループなのでしょう。

繰り返す根気と、繰り返しを断ち切る行動力、これが繰り返しと付き合う秘訣なのかもしれません。