「もっと早く、カトリックに改宗しておれば、部下たちにもう少し優しくできておったと思います」
けれど、前を向くTさんの表情は、決して暗くありません。私たちを優しく見守るマリアさまの下では、人生の辛酸を舐め尽くしたTさんのような人でも、幼子のようになれるのでしょうか。
「アヴェ・マリア、恵みに満ちた方、主はあなたと共におられます」
潮騒のかろやかなリズムが耳に響き、磯の香りをのせたやわらかな風が頬をなでます。
これまでどれだけゆるし助けられてきたことでしょう。それなのに、同じ過ちを繰り返してきました。
これまでどれだけ見守られてきたことでしょう。それなのに、長い間気づきもしませんでした。
これまでどれだけ愛されてきたことでしょう。それなのに、感謝することさえできませんでした。
私もまた、ほほえむマリアさまのかたわらで、小さな子どもになって祈るのです。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」「ありがとう。ありがとう。ありがとう」「そして、これからも、どうかお助けください」