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私たちのお母さん

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

「お母さん」という言葉は、世界のいたるところで温かさ、やさしさ、安らぎを覚える言葉であり、そのような存在者である。

人は皆、「お母さん」をいただいている。そして、その「お母さん」について、その昔、先輩がよく言っていたことを思い出す。「『お母さんになる』ことは易しいが、『お母さんである』こと、『あり続ける』ことは難しい」と。

赤ちゃんを授かると自ずと「お母さん」になる。大変なのはそれからであろう。お母さんは赤ちゃんにとって、この世で最初に出会う人である。そして、コミュニケーションを持つ最初の人でもある。さらに、人としての在り方を見せてくれる人である。赤ちゃんはその成長とともに、人間としての喜怒哀楽を表現するようになっていく。その始まりのすべては「お母さん」なのである。

「イクメンパパ」が多くなったとはいえ、子育てに関してはお母さんにどうしても比重がかかってしまう。それだけわが子への影響力も大きくなる。

「あなたは素直な子ね」というお母さんの一言によって、子どもは素直な自分に出会うことができる。そして子どもは、そのことば通りに自分を同一化させようとする。これが子どもの成長における大事なポイントであろう。否、人としての成長におけるモデルを、子育ての過程のなかに見ることができるのではないだろうか。

反対に、「あなたはダメな子ね」の一言で、ダメな自分に当てはめていく子どもになっていく。子どもの足りないところを指摘する子育ては、「お母さん」という言葉からイメージされる温かさ、優しさには程遠い内容ではなかろうか。

イエスさまのお母さんは、マリアさまである。そして、わたしたちのお母さんでもある。