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自分らしく

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

高校を卒業して50年を記念する同期会が横浜で開かれ、私も参加しました。同じ高校に学んだ仲間でしたが、卒業後それぞれ自分らしい道を歩いていることがわかりました。

オープニングアトラクションに演奏してくれたのは、ファゴット奏者のK氏、平家琵琶を奏でながら「那須与一」を語ってくれた、S氏です。S氏が持ってきた琵琶は300年ほど前に作られた名器だそうです。この同期会の代表幹事は演劇集団をプロデュースしているI氏。

近況報告をと言われて最初に話したのは、千葉郊外へ移住しトマト農家になった人でした。「私が作るトマトはおいしいのよ。味の良さだけは誰にも負けないわ。皆さん、ぜひ食べに来てください。」次に登場したのは、建築設計士となった方で、住宅のリフォームをしていることを話されました。

いよいよ、私の番がきました。

「子供の頃から憧れていた『アルプスの少女ハイジ』の生活をしたいと思い、7年前、北海道へ移住しました。そこで羊5頭を飼って暮らしています。今日かぶってきた帽子も、ベストも、我が家の羊の毛で作りました。」そんな話をすると、「楽しそうだね」「すごく若返ったよ。北海道のどのへんで暮らしているの?」「帽子はどうやって作ったの?」と矢継ぎ早に質問されてしまいました。

横浜に数日滞在し、用事を済ませて北海道大沼にある自宅に帰りました。紅葉が一段と進んでいました。

〈なんて美しいのでしょう。〉

自分らしく生きるとはどういうことなのでしょう。それには場所と役割が必要です。私にとってその場所は北海道大沼でした。その役割は羊を飼って暮らすことだったと思います。

「ただいま!」森の木々よ。

「ただいま!」羊たちよ。