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始め善ければ ・・・

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

「始め良ければおわり良し」とはよく言われる言葉です。普通、漢字は優良可の良を使います。

ヨハネパウロ2世とマザーテレサ、お2人を描いた個展を開いた時、その個展のタイトルに私は、善良の善の字を使って「善き訪れ」と名付けました。全き善をお2人の初来日から感じたからでした。

当時、私は受洗して10年余り、生活の中に信者としての生活のリズムが出来上がりつつあるときでした。第2公会議後、ヨハネ23世の英断に感銘を受け、それまでのカトリックに対する偏見を捨て去って信仰を得たところでした。

1981年2月23日、後楽園球場に降りしきる雪がピタリとやんでヨハネパウロ2世法王様の司式に拠るミサが始まった時、そこに全き善なる時間が流れ始めた事を全身で感じました。

2か月後の4月26日午前に、上智大学を訪問なさったマザーテレサは午後、聖心女子大学に立ち寄られました。シスター方とにこやかに交流される様子は、まさに世の中の全ての善意が集まってきたと思えるような温かさと明るさに満ちていました。生き生きと豊かに変化するマザーの表情に思わず筆を執り、数枚のクロッキーをノートに描きつけました。

2月の後楽園で、ミサが始まるまで待ちくたびれて仕方なく描きつけたスケッチと共に、両者をもとにタブロに制作した作品を展示した「善き訪れ」の個展は、同年の11月の開催でした。

ご来場くださった吉山登神父様から「鎌倉のキリシタン」の殉教画を描いて欲しいと依頼されたことがきっかけとなり、各地の歴史を紐解き描く、キリシタン歴史画家としてのスタートをきったのでした。

まさに始め善ければ・・で、以来35年に亘り描き続けています。