もう1組の母と幼子、それは、パリのルーブル美術館で目にした姿です。珍しく閑散とした館内で、1人の母親が1枚1枚の絵をじっとみつめています。そばに寄り添っている幼子は一言も口にせず、母親と全く同じように画面から目を離さずにみつめているのです。静まり返った館内を、靴音も立てずに歩き、心ゆくまで名画を鑑賞する母と子。幼子がこの画家たちについて知るのは、ずっと後になってからでしょう。けれども、今、母親の姿から、すぐれた芸術に接する心構えと、その作品が語りかける声なき声に耳を傾ける大切さを学んでいたに違いありません。
大自然や芸術の美を感じる繊細な心の人は、神様と人々の愛をすなおに受け入れ、それに応えることを知っています。また、人々の苦しみや悲しみに共感し、助けたいと願うのも、このような心の持ち主なのです。
わが子が胎内にやどった時から、豊かな心を育むように召されている母親に替わりうるものが他にあるでしょうか。