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おおらかに

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

最近は「おおらかな人」をあまり見かけなくなりました。

私たちは、いろいろなことをコンピューターで管理する社会にいますので、人間が機械に合わせる状況が生まれています。そのことは、私たちがおおらかさを失った原因の一つかもしれません。機械は、コンマを打ち間違えただけで偉そうにびくともしません。人間さまは、慌てて自分の小さなミスを探すのです。機械は決しておおらかではありません。このように、ある枠の中で、微細な間違いを犯さないようにといつも神経を研ぎ澄まし、機械のやり方に合わせて生きていると、人の優しさや、状況に応じてやり方を変える柔軟性は重視されなくなるでしょう。

決まったことを予定通り、正確に仕上げることが優先されるなら、予想外のことや人間らしい回り道は歓迎されません。それは潤いのない固い社会です。

私は、漫画やファンタジーが多くの大人を魅了しているのは、このような状況と真反対の世界だからではないかと思います。決まりきったルールを超えたストーリー展開で、想像力や感情を思い切り羽ばたかすことが出来るからではないでしょうか。

人間は、傷つきやすい感情と肉体をもっています。間違いを犯さない機械のようには生きられません。むしろ考え違いや飛躍があるのは当然のことなのです。もし、仕事で誰かがミスをした時、私たちが、その人の気持ちを受け止めようと歩み寄ったり、理解するために失敗の原因を聞いたりするなら、その人は救われた気持ちになります。

私たちがそのように共感しあうおおらかな関係をつくることができたら、この社会で多くの犯罪が起きずにすむのではないかと思います。