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おおらかに

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

幼稚園で保育の様子を見ていると、教室によってずいぶん雰囲気が違うことに気づく。ある教室では、子どもたちがのびのびと課題に取り組み、子どもたちの顔には安心と喜びが浮かんでいる。別の教室では、同じように課題に取り組んでいても、何か緊張感が漂っている。子どもたちの動きがどこかぎこちない。

その違いは、どうやら先生と子どもたちの信頼関係から生まれてくるようだ。ベテランの先生は、子どもたちの動きを熟知し、子どもたちがどんな行動をしても驚かずに対応することができる。子どもたちをあるがままに受け入れながら、教室を大きな愛で包み込んでゆくことができる。だからこそ、子どもたちはのびのびと、自由に行動できるのだろう。

ところが、まだ幼稚園で働き始めて日の浅い先生などは、想定外の子どもたちの動きに戸惑い、子どもたちの動きを何とかコントロールしようとしてしまうことが多い。学校で習った理想の教室を思い描き、子どもたちを自分の思った通りに動かそうとしてしまうのだ。当然、子どもたちのあいだには緊張感が漂う。先生に気に入られようとして、子どもたちの動きがぎこちなくなってしまうのだ。

どんな人間関係でも、同じことが言えるだろう。

状況を自分の思ったままにコントロールしようとする人の周りには緊張感が漂うが、状況をあるがままに受け入れられる人の周りには安心感が漂うものだ。状況をコントロールしようとする人は、心の中で自分自身も厳しくコントロールしようとしている。理想通りの自分になろうとして、緊張しながら生活しているのだ。その緊張感が、周りの人たちにも伝染してゆく。

あるがままの自分を受け入れ、あるがままの状況を受け入れることができる、心のおおらかさを持ちたいと思う。