さて、長男が小学3年生の夏、転勤で東京のど真ん中へ引っ越しました。転校した小学校へ登校するには、交通量の多い国道を渡らなければなりません。国道を覆うようにして高速道路が走っており、排気ガスが常に充満していました。急激な環境の変化に、私も子供たちも風邪ばかりひいていました。子供たちの遊びにも変化がありました。通学路に大きなスーパーがあり、おもちゃがすぐに買えるのです。小さなおもちゃを集めては、自慢しあいます。せかせかと流れる時間の中で、私はこのままではいけないと思いました。
6年前、私たち夫婦は大都会の横浜から、おおらかな生活を求めて、大自然の北海道大沼へ移住しました。現在は、湖畔の森の中で羊を飼って暮らしています。時間はゆったりと流れていきます。
時々子供たちは、孫たちを連れて遊びに来ます。
「ここはのんびりするなあ」
孫たちは仔羊たちとたわむれながら、いかにも楽しそうです。
子供たちは呟きます。
「ここは、第2のふるさとだよ」